「Q」の19話、シーズン2の7話。
正体不明の日本映画の未編集のフィルムが発見され、映像に関する古いおもちゃなどを保管している施設「おもちゃ映画ミュージアム」の管理人がそれを紹介するという話。
未編集なため、失敗したと思われるカットがそのまま残っているのだけど、あまりにテイク数が多すぎる上、映っている内容も撮り直す必要があるとは思えない内容で、異様だという。
最初に紹介される「ソーマトロープ」などの、古いアニメーションの道具はすべて実際に存在するもの。
「おもちゃ映画ミュージアム」も実在するし、チラッと映る映像作品もこのためにそれっぽいものを用意したとは思えないので、おそらく本当にミュージアムにあるものを紹介しているのだろう。
これは本当のドキュメンタリーっぽさを大事にしているというか、丁寧に物語に入っていくことが出来て良い。
それゆえに映像自体には違和感のある部分もあるが、それが意図的なものかはとても悩ましい。
フェイクドキュメンタリーというジャンルは、「放送禁止」のように、「普通のドキュメンタリーと思って見てたら、どんどん怖い内容に……」というのが王道だとは思う。
本当にあった出来事かのようなプロモーションがなされたのは「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(もしくはパクリ元と言われる「ジャージー・デビル・プロジェクト」)が発祥か。
ブレア・ウィッチ・プロジェクトは大ヒットしたけど、リアルタイムで体験していた人以外の評価は高くなく、そのプロモーション込みでの作品なのは明白。
「Q」は名前で「フェイクドキュメンタリー」と銘打ってる時点で騙すような意図はないし、明らかな怪異が登場する時点でそれはもうフェイクなのだから、これをフェイクドキュメンタリーと言ったら怖い映像の多くがフェイクドキュメンタリーになるのでは?とちょっと思う。
かといって、「フェイクだとわかってしまったら完全に面白くない」という風にも自分は思わないし、わかった上でリアルなドキュメンタリーっぽさを求めている部分がある。
あまりに雑に偽物とわかる作りがあると萎えてしまう(「コワすぎ」みたいなのは置いといて)。そういうジャンルなんだな、と思っている。
何度も撮り直される映像はなんてことないシーンにも見えるが、奥の方に何かが横たわってるようにも見え、よくわからないので、最初からどことなく不気味。
古い映像のようになってはいるが、映像の画質が妙に良く、白黒時代の映画っぽさがあまり感じられないので、わりと最近に撮られたものなのかもしれない。
もっと低レベルな作品だと時代設定を無視した画質やアス比の映像を見るけど、さすがにこの作品のスタッフは古い映像っぽく加工する技術くらいは心得てるだろう、とメタ的に、思っているんだけど、どうなんだろう?
同じような映像を見続けているとだんだん不気味な映像に変わっていくというギミック自体は、ホラーの定番だけどすごく良かった。
途中で変な黒い影が現れるシーンはもちろんだけど、女性がカメラの前に急に現れるシーンが一番怖かったな。
同じような映像を延々見せるという描写自体は、飽きが来るので好き嫌いが分かれるんだろうなと思うけど、ギリ耐えられる長さだった。
この映像の目的は何なのかというと、儀式を撮影したものなのか、撮影して公開することまで含めた儀式なのか……。
奥に布団をかぶった何かが横たわってる(遺体?)ことと、謎の存在が家の外から現れる様子を見ると、シーズン1の「来訪」と関係あるのでは?と思った。
「来訪」と関係あるにせよないにせよ、あれは撮影禁止の儀式と言いながら撮影がなされており、それ自体が「なぜ撮影したのか?」みたいな考察要素を残しているので、この作品もそういう感じなのかも。
映像のテイク数が多いことだけじゃなく、明らかに映像を見ると、怪異が部屋に侵入しているという異様さに誰も言及していないことは不気味。
でも、映像を見せる前に「変なものが映り込んでいるんですよ」と言ったら面白さが半減するし、それは作品の都合では?とも思える。
「イシナガキクエ」でも解決編で絶対に残すべきじゃない殺人の現場みたいな映像をわざわざ保管してたけど、あれはもう視聴者に解説として見せるために作ったものなのは明らかだし。
もちろんそれで「この描写は意味ない」と確定するほど強い根拠ではないけど、何度も言うように、「Q」は考察の余地は残してるものの明確な回答はたぶん残していないだろうと自分は思っているので、あまり深くは考えず、ホラー映像としてまあまあ面白かった、の意見にとどめておく。